借金問題を解決するための選択肢として「個人再生」と「任意整理」があります。どちらも債務整理の方法ですが、手続きの流れや借金の減額方法、家族への影響など様々な点で異なります。
どの方法を選ぶかによって、その後の生活や返済計画に大きく影響するため、慎重に検討しましょう。この記事では、個人再生と任意整理の違いや、それぞれが向いている人の特徴について、司法書士の立場から分かりやすく解説します。
個人再生と任意整理の違い
個人再生と任意整理は、いずれも債務整理に数えられていますが、内容はまったく異なるものです。まずは、個人再生と任意整理、それぞれの特徴について解説します。
以下の表も参考にしながら、違いについて理解しましょう。
項目 | 個人再生 | 任意整理 |
---|---|---|
手続き | 裁判所を利用 | 裁判所を利用しない |
債務減額 | 元本の大幅な減額(およそ5分の1~10分の1、最低弁済額は債務額や財産額によって決定) | 将来利息・遅延損害金のカット |
住宅ローン | 住宅ローン特則を利用することで、一定の要件を満たせば住宅を維持できる場合あり | 対象外(手続きの対象にすると維持不可能に) |
財産の処分 | 清算価値保障の原則により、財産総額以上の弁済が必要となる場合があるが、財産の処分までは求められない | 処分する必要なし |
保証人への影響 | 全ての債務が対象となるため、保証人へ一括請求される可能性が高い | 対象とする債務を選べるため、保証人のいる債務を外すことで影響を避けられる |
官報への掲載 | あり | なし |
手続きの複雑さ | 複雑で、書類作成や裁判所とのやり取りに時間と手間がかかる | 比較的簡易で、債権者との交渉が中心となる |
費用 | 任意整理より、司法書士費用や裁判所費用が高額になる傾向 | 比較的安価に済むことが多い |
収入の安定性 | 継続的かつ安定した収入が必要(再生計画に基づく弁済を継続できる見込みが必要) | 一定の収入が必要(和解内容に基づいた分割払いが可能な程度の収入) |
対象となる債務 | 全ての債務が対象(税金、養育費など一部非減免債務あり) | 対象となる債務は自由に選択可能 |
ブラックリスト | 信用情報機関に登録され、5年~7年程度(認可決定または完済から)新たな借入やクレジットカードの利用が制限される | 信用情報機関に登録され、5年程度(和解成立・完済から)新たな借入やクレジットカードの利用が制限される |
手続きの方法と裁判所の関与の違い
個人再生と任意整理は、裁判所の関わりがあるかが大きな違いです。
個人再生では法的な強制力によって債務整理を進められます。対して、任意整理は各債権者との任意の合意によって手続きが進みます。
個人再生は、裁判所を介する法的手続きです。個人再生の手続きは、裁判所への申立てと選任された個人再生委員の指導のもとで進められます。
一方、任意整理は裁判所を通さずに、弁護士や司法書士などの専門家を通じて債権者と直接交渉します。債権者との合意が必要となるため、交渉が難しくなるケースもあるでしょう。
借金の減額率と圧縮方法の違い
個人再生は、法律に基づいて借金を大幅に減額できる制度です。個人再生の手続きを行えば、一般的に借金の5分の1~10分の1程度カットされます。
例えば500万円の借金の場合、個人再生では5分の1の100万円まで減額される計算になります。借金の総額が大きい場合は個人再生の方が返済負担を大きく軽減できますが、手続きが複雑になるというデメリットがあるので注意が必要です。
任意整理では、利息制限法に基づく利息の引き直し計算により減額されます。個人再生と比較すると、元金自体の大幅な減額は期待できません。
家族への影響と対象債務を選択できるという違い
個人再生では、裁判所への出頭や自宅への書類送付が必要になるケースがあります。自宅へ書類送付がされることで、家族に知られる可能性が高くなるでしょう。また、官報に名前が掲載されるため、情報が公になるリスクがあります。
任意整理は、基本的に家族に隠して手続きを進めることも可能です。官報への掲載もありません。ただし、信用情報機関には両方とも登録され、任意整理は5年程度、個人再生は5〜7年程度ブラックリストに載ることになります。
さらに、個人再生と任意整理は、債務の選択ができる点も大きな違いです。個人再生では債権者平等の原則が適用されるため、全ての借金が対象となります。対して、任意整理では債務者が債務整理を行う債権者を自由に選ぶことができます。
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任意整理がおすすめなケース
任意整理は、全ての人に適した方法ではありません。ここでは任意整理が特におすすめなケースについて説明します。自分の状況と照らし合わせて検討してみましょう。
借金の総額が比較的少ない人
任意整理は、借金総額が比較的少ない人に向いています。また、手続きが比較的シンプルで費用も安く済む傾向があります。少額の借金であれば、個人再生より任意整理の方が効率的に解決できるケースが多いです。
目安としては、残元金が100万円〜200万円程度のケースで任意整理が適していると言えるでしょう。借金総額が少額であれば、5年の分割払いでも月々の返済額が1万7,000円程度で済むため、無理なく返済できる可能性が高いです。
安定した収入があり返済能力のある人
任意整理では毎月の返済額を計画し、それを3年以上払い続ける必要があります。よって、収入が安定している人が向いていると言えるでしょう。
安定した収入があれば任意整理による分割返済も無理なく続けられるため、債務問題をスムーズに解決できる可能性が高いです。
収入の安定性は、任意整理を成功させるために非常に重要です。途中で支払いが難しくなると、再度の任意整理や自己破産に移行せざるを得なくなる可能性があります。現在の収入だけでなく、将来の収入見込みも考慮して判断することが大切です。
保証人や連帯保証人への影響を最小限に抑えたい人
任意整理では整理する債務を選ぶことができるため、保証人の付いている債務を整理対象から除くことも可能です。
連帯保証人がいる債務を任意整理の対象外とすることで、保証人に請求が行くことを防ぐことができるのは大きなメリットだと言えるでしょう。家族や知人が保証人になっている場合は、特に重要な検討ポイントです。
債務整理の一つである任意整理では、保証人を心配する必要がないケースもありますし、逆に保証人への影響が避けられないケースもあります。 債務整理を検討する際に保証人のことを慎重に考慮することは、問題解決への近道といえるでしょう。 […]
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個人再生がおすすめケース
借金の総額が多額な場合など、任意整理では解決が難しいケースもあるでしょう。ここでは、個人再生が特におすすめなケースについて説明します。
マイホームや車などの財産を残したい人
個人再生では財産を処分する必要がなく、住宅ローンを支払いながら自宅に住み続けられます。財産を守りながら借金問題を解決したい場合、個人再生は貴重な選択肢となるでしょう。特に住宅ローンがある場合は、個人再生の利点を大きく活かせます。
債務整理の中でも最終手段と言われる自己破産では、一定以上の財産が失われることになります。対して、個人再生では手放したくない財産がある場合でも残すことが可能です。
住宅資金特別条項を利用すれば、マイホームを残したまま債務を大幅に減額することが可能です。マイホームや生活に必要な車など、重要な財産を手放したくない場合は個人再生が適していると言えるでしょう。
借金総額が多く任意整理では返済が困難な人
個人再生は借金を大幅に減額できるため、任意整理では返済が困難な大きな借金を抱えている人に適しています。
個人再生は、債務整理の中でも自己破産に次ぐ割合で借金を圧縮できるため、多額の借金を抱えている人には任意整理よりも効果的な選択肢となるでしょう。対して、任意整理では元金はそのまま残るため、総額が大きいと返済計画が立てづらくなります。
資格制限を受けたくない職業に就いている人
個人再生は自己破産と異なり、特定の資格や職種に関する制限を受けることがありません。資格や職業への影響を最小限に抑えながら借金問題を解決したい場合は、任意整理、もしくは個人再生を検討すべきでしょう。
自己破産で制限を受けるのは、弁護士・税理士・公認会計士などの士業や、生命保険募集人、宅地建物取引士などです。資格制限を受ける職業の人は、個人再生が適しています。職業上の制限を避けつつ借金問題を解決したい人は、個人再生を検討してみましょう。
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任意整理、個人再生の切り替え
中には、債務整理の途中で状況が変わることもあるでしょう。
次の項目では、任意整理と個人再生の間での切り替えについて説明します。いざという時のために知っておくと安心です。
任意整理から個人再生への切り替えが可能なケース
任意整理の手続き中や返済中でも、事情次第では途中から個人再生に切り替えることは可能です。債権者との和解が成立しなかった場合や、任意整理後に収入が減少して返済が困難になった場合、切り替えを検討すべきタイミングといえるでしょう。
任意整理から個人再生への切り替えには、安定した収入があることや、負債総額が5,000万円以下であることなどの条件を満たす必要があります。条件を満たしていれば、任意整理の途中でも個人再生に移行できるケースが多いです。
任意整理から個人再生への切り替え時の注意点
任意整理から個人再生に切り替えると、個人再生の費用が別途かかります。任意整理にかかった費用は戻らないため、二重の費用負担になる可能性には注意が必要です。切り替えを行う際は、経済的な負担を考慮して判断する必要があるでしょう。
また、個人再生では主債務者の減額分が保証人に請求されるため、保証人に大きな迷惑がかかる可能性があります。保証人がいる場合は特に慎重な検討が必要です。
さらに、個人再生すると官報に個人情報が掲載され、いわゆるブラックリストに載っている期間も延びるおそれがあります。個人再生を行う際は、社会的な影響も考慮し、メリットとデメリットを総合的に判断しましょう。
個人再生から任意整理への切り替えの難しさ
個人再生は裁判所の手続きを経ているため、再度任意整理に戻すことは実質的に困難です。個人再生は借金が大幅に減額されるため、通常は個人再生から任意整理への切り替えはあまり行われません。
また、個人再生の方が任意整理よりも借金の減額効果が大きいため、切り替えることでメリットが得られるケースはほとんどありません。個人再生を選んだ場合は、その手続きを最後まで進めるのが一般的です。
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まとめ
個人再生と任意整理はそれぞれ特徴が異なり、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。借金の総額や安定した収入の有無、保証人の有無、財産の状況などを総合的に考慮して判断しましょう。
任意整理は比較的少額の借金や保証人への影響を抑えたい場合に適しており、個人再生は多額の借金や財産を残したい場合に向いています。どちらの方法にもメリット・デメリットがあるため、専門家に相談して最適な選択をすることが大切です。
当事務所では、個人再生や任意整理に関する相談も随時受け付けています。借金問題で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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