債務整理の一つである任意整理では、保証人を心配する必要がないケースもありますし、逆に保証人への影響が避けられないケースもあります。
債務整理を検討する際に保証人のことを慎重に考慮することは、問題解決への近道といえるでしょう。
任意整理をすると保証人はどうなるか?
任意整理では保証人付きの借金について選択肢があります。保証人に影響を及ぼさない方法と、保証人への請求が発生する場合について詳しく見ていきましょう。
任意整理の対象から外した借金は保証人に請求されない
任意整理では債権者との交渉を検討する際、対象とする借金を選択できます。保証人がついた借金を整理対象から外せば、保証人への返済請求は生じません。
具体的な対策として、まずは債務全体の中から保証人付きの借金とそうでない借金を仕分けします。その上で、返済計画の実現性を踏まえながら保証人付きの借金を除外する判断を行いましょう。
返済計画を立てる際には、保証人付きの借金返済を優先的にすることで、保証人の信用を守ることができます。場合によっては返済期間が長期化する可能性もありますが、保証人との関係維持を考えれば十分価値のある選択といえるでしょう。
保証人付きの借金を任意整理すると保証人に返済義務が移る
逆に保証人付きの借金を任意整理の対象に含めた場合、債務者の返済義務は一時停止されますが、その代わりに保証人への請求が始まります。
債権者側は保証人に対して一括での返済を求めるケースが多く見られます。ただし保証人が債権者と交渉することで、分割払いが認められることもあるでしょう。
仮に保証人が一括返済に応じられない状況であれば、保証人自身が債務整理を検討せざるを得なくなる可能性も出てきます。保証人の生活への影響を考えると、慎重な判断が求められるところです。
保証人への請求が始まると、保証人は債務者に対して求償権(立て替えた金額の返還を求める権利)を得ることになります。しかし債務者本人に支払い能力がないケースが多く、保証人が実質的な負担を強いられる結果となってしまいます。
保証人との関係悪化も避けられない事態となり、家族間の保証であれば親族関係にまで影響が及ぶ可能性があるでしょう。そのため、保証人付きの借金は任意整理の対象から除外することが望ましいでしょう。
任意整理後は一定期間子どもの保証人になれなくなる
任意整理を実施すると信用情報機関に事故情報が登録され、その間は住宅ローンや奨学金など各種ローンの保証人になることが難しくなります。
信用情報への登録期間は概ね5年から7年程度となります。当然ながらこの期間中は新規のローン契約やクレジットカードの作成なども制限されるでしょう。
子どもの奨学金を例に取ると、事故情報の登録中は保証人になるのが難しいため、配偶者や他の親族に保証人を引き受けてもらわなければなりません。
信用情報機関への登録は複数存在し、主要なものとして個人信用情報機関(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、シー・アイ・シー(CIC)があります。債務整理の対象とする債権者によっては、3機関すべてに登録される可能性があるでしょう。
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押さえておきたい保証人と連帯保証人の違い
債務整理を検討する上で、保証人の種類による違いを理解することは極めて重要です。保証人と連帯保証人では以下のように負う責任が大きく異なります。
項目 | 保証人 | 連帯保証人 |
---|---|---|
責任の範囲 | 主債務者が返済できない場合に、補充的に責任を負う | 主債務者と同等の責任を負う |
債権者からの請求 | まず主債務者に請求するように主張できる(催告の抗弁権) | 主債務者への請求を待たずに、いつでも請求される可能性がある |
主債務者の状況 | 主債務者に支払い能力があれば、差押えなどを防げる可能性がある(検索の抗弁権) | 主債務者の状況に関わらず、いつでも差押えなどを受ける可能性がある |
保証人の数 | 保証人が複数いる場合、それぞれの負担割合に応じて責任を負う(分別の利益) | 連帯保証人が複数いる場合、全員が全額について責任を負う |
主債務者と同等の責任を負う連帯保証人
ただの保証人であれば、債権者からの請求を一旦拒否できる権利が認められています。しかし、連帯保証人には主債務者と同じ責任が課されます。債権者から請求があれば直ちに支払いに応じなければならないため、連帯保証人の立場は重いものです。
金融機関が連帯保証人を求める背景には、確実な債権回収を目的とする意図があります。連帯保証人制度は債権者側にとって強力な債権保全手段として機能しているのです。
連帯保証人が負担する債務額は元本だけでなく利息や遅延損害金なども含まれます。債務者が返済を怠った場合、これら付随する債務まで連帯保証人が負担することになるのです。
催告・検索・分別利益など抗弁権の有無
保証人には、主債務者への請求を優先するよう求める権利があります。具体的には主債務者への催告を要求できる権利や、主債務者の財産からの回収を要求できる権利です。
一方で連帯保証人にはこうした権利が一切認められません。債権者からの請求に対して即座に全額支払いに応じる必要があるのです。
また保証人には「分別の利益」も認められており、複数の保証人がいる場合には保証割合に応じた負担となります。一人の保証人が全額を支払った場合でも、他の保証人に対して負担部分の求償が可能です。
民法改正による連帯保証制度への影響
2020年4月に施行された民法改正により、連帯保証契約には極度額の設定が必須となりました。責任の上限額をあらかじめ定めることで、過大な負担を防ぐ仕組みが整えられたのです。
事業用資金の借入れでは公正証書による意思確認手続きも必要となり、安易な連帯保証契約の締結は困難になりました。
改正により連帯保証人が負う責任範囲が明確化され、より健全な制度運用が期待できます。保証人保護の観点から見ても重要な制度改革だったといえるでしょう。
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任意整理で保証人に迷惑をかけないようにするためには?
保証人への影響を最小限に抑えるため、いくつかの方策について検討する必要があります。状況に応じた適切な対応が求められます。
保証人付きではない借金のみを任意整理する方法
任意整理では対象債権を選択できる特徴があります。保証人が付いていない借金だけを任意整理の対象とすれば、保証人への影響を避けることができます。
安全性を重視すれば確実な選択肢ですが、現在の収支状況や返済計画との兼ね合いも大切です。債務総額の中で保証人付き債務がどれくらいあるかも考慮しながら判断しましょう。
状況によっては保証人付き債務の返済を優先し、他の債務を任意整理するといった方法も有効です。債務全体のバランスを見極めながら、最適な方法を選択することが大切です。
保証人と事前に交渉した上で任意整理する方法
保証人への影響を回避することが難しい場合は、早い段階で事情説明を行うことが現実的な対応です。状況が悪化する前に保証人と率直に話し合うことで、互いの立場を理解し合い最善の解決策を見つけられます。場合によっては保証人も含めた任意整理を検討する選択肢もあるでしょう。
保証人との話し合いでは、現在の収支状況や今後の返済計画について具体的な説明が必要です。収入や支出の状況、借入金の残高、返済額など、できるだけ詳しい情報を共有することで信頼関係を築くことができます。
金融機関との交渉経過についても保証人に報告し、常に情報共有を心がけることが重要です。保証人の立場に立って考え、誠実な対応を続けることで、より良い解決策を見出すことができるでしょう。
弁護士や司法書士など専門家への早期相談
任意整理による影響や最適な手続方法については、法律の専門家に相談することが不可欠です。弁護士との相談により、法的リスクや効果的な交渉戦略について適切なアドバイスが得られるでしょう。
専門家が介入することで、和解交渉や返済計画の策定まで包括的なサポートを受けられます。債務者と保証人双方にとって、望ましい解決策を見出すことも可能です。
専門家への相談は早ければ早いほど選択肢が広がります。返済が遅れ始めた初期段階での相談が望ましく、督促が始まってからでは対応の幅が狭まってしまうかもしれません。
債務整理の方法は任意整理だけでなく、個人再生や自己破産など他の選択肢もあります。状況に応じて最適な方法を選択するためにも、専門家への相談は不可欠です。
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まとめ
任意整理では保証人への影響を考慮した対応が求められます。専門家のアドバイスを受けながら最適な方法を選択することで、保証人への影響を最小限に抑えることが可能です。
当事務所では任意整理に関する相談を随時受け付けていますので、一人で悩まずまずは専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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