昨今の経済情勢の悪化や度重なる値上げは、家庭の状況や社会的なポジションの区別なく、経済状況を逼迫させており、多額の借金を抱える人も増えてきています。
養育費を払う立場にある人もまた、例外ではありません。
借金問題の解決策のひとつである債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産といくつかの選択肢がありますが、その中でも自己破産は借金のほとんどが免責となることもあり、注目を集めています。
そこで今回は、自己破産しても養育費はチャラにはならないということについてまず解説していきます。
さらに自己破産と養育費の関係や、自己破産後に養育費を免除されるケース、養育費を滞納している場合の自己破産手続きの注意点、そして自己破産後に養育費を減額する方法について説明していきます。
【結論】自己破産しても養育費はチャラにはならない
自己破産をすると、ほとんどの債務は免責され、支払い義務がなくなりますが、一部の支払い義務は残ります。その一つが養育費の支払いです。
しかし、自己破産をした状態ではほとんどの財産が残っていないケースが大半であり、当初の決まりの通りに養育費を支払い続けることは難しいと考えられます。
そのため、現在の状況で可能な限り支払えるよう、養育費の減額を元配偶者と協議する必要が出てきます。
自己破産とは債務整理方法の一つで破産法において認められている、借金の支払い義務をなくすための申立・手続きです。 自己破産する事によって債権者から請求される督促や催告などが止まり、さらに(厳密には自己破産申立てを行い、免責許可決定が出た[…]
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自己破産と養育費の関係
自己破産をすると、破産者の債務のほとんどは免責され、結果として、破産するとほとんどの借金などの支払義務から解放されます。
しかし、養育費の支払いは免除されません。これは、養育費が非免責債権に該当するからです。
この自己破産と養育費の関係について、以下で詳しく見ていきます。
養育費は「非免責債権」に該当する
非免責債権とは、自己破産によって免責されない債権のことであり、自己破産後も支払いを続けなくてはなりません。
- 養育費・・・子の監護義務に基づく請求権
- 税金や国民健康保険料・・・租税等の請求権
- 暴行をして傷害を与えた被害者に対する損害賠償金や慰謝料など・・・破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 意図的に債権者一覧表に記載しなかった債権者に対する債権・・・破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
上記に該当するものが、非免責債権にあたります。
養育費を滞納することの影響
養育費は、子どもが成人になるまで支払わなければなりません。
もし決まった額を支払わずに滞納していると、元配偶者(親権者)から裁判を起こされ、強制執行により資産が差し押さえられる可能性があります。
また、給料が差し押さえられてしまうと、未払い分を完済するまで給料が受け取れなくなってしまう恐れもあります。
さらに、子供との面会権にも影響が出る可能性があります。面会権とは、子供と同居していない親が会うための権利であり、それと同時に「子供が一緒に暮らせないもう片方の親と会う権利」でもあります。
そのため、養育費の支払いが行われないことを理由に会わせないというのはできません。とはいえ、現実としては、「養育費を支払わない場合は会わせない」と主張してくる可能性があります。
このような場合、裁判を起こして面会権を要求することはできますが、スムーズに会うことは難しくなります。
養育費の請求に関する時効
養育費の請求には時効が存在します。
養育費は「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権」に該当します。
このようにケースによって時効は異なりますが、裁判により時効を止めることも可能です。
養育費の請求に時効は存在しますが、時効によって支払いを免れようとせず、誠意を持って話し合いや支払いを行うことが大切です。
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自己破産後に養育費を免除されるケース
ここでは、自己破産後に養育費を免除されるケースについて解説します。主なケースは以下の2つです。
- 生活保護を受給しなければいけなくなった場合
- 時効が成立した場合
以下、順を追ってみていきます。
ケース1:生活保護を受給しなければいけなくなった場合
生活保護を受給しなければならなくなった場合、養育費を免除される可能性があります。
支払うべき物があったとしても、生活保護費は強制執行の対象とはなりません。これは、生活保護費は最低限度の生活を保証するためのものだからです。
また、生活保護受給者は養育費の分担義務を負いません。以上の理由により、生活保護受給者は、養育費の支払い義務は免除されます。
ケース2:時効が成立した場合
ケースその2として考えられるのは、請求権の時効が成立した場合です。
- 公正証書等で当事者同士で養育費を取り決めていた場合・・・請求できることを知った時から5年で時効が成立
- 審判や訴訟、調停で決まった場合・・・判決の確定から10年で時効が成立
ただし、時効の更新や完成猶予がある場合、5年または10年経っていても時効は成立しません。つまり、養育費の請求権は消滅しないということです。
時効の更新や完成猶予の事由としては、裁判上の請求、支払督促、和解および調停の申立て、強制執行などがあります。
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養育費を滞納している場合の自己破産手続きの注意点
自己破産の手続き中に滞納している分の養育費を払うと、偏波弁済とみなされて、裁判所によって管財事件に振り分けられる可能性があります。
自己破産をする際には、養育費の支払いは慎重に行う必要があります。
以下、詳しく解説していきます。
「偏頗弁済」とは
「偏頗弁済」とは、特定の債権者にだけ、優先して返済することを指します。より具体的には、特定の債権者に優先的に債務を支払うことや担保権を設定することを指します。
偏頗弁済と考えられるのは、返済不能状態に陥った段階からの支払いです。具体例をひとつあげるならば、自己破産等の債務整理の手続きを司法書士などの専門家に依頼した段階です。
司法書士などへの手続き依頼前、具体的には受任通知の送付前に特定の債権者に優先して弁済しても追求される可能性は少ないといえます。
管財事件とは
偏頗弁済を行ってしまった場合、裁判所によって「管財事件」に振り分けられてしまいます。
管財事件とは、破産管財人が裁判所から選任され、破産者の財産を調査・管理・処分し債権者に配当したうえで免責の判断をする手続きのことです。
偏頗弁済があった場合には、破産管財人は「否認権」を行使します。否認権を行使されると、弁済自体を認めてもらえない可能性があります。
具体的には、滞納していた養育費を支払っていた場合、その支払った養育費を回収され再分配されます。つまり、偏頗弁済がおこなわれる前の状態に戻るということです。養育費をはじめとした偏頗弁済には、十分注意しましょう。
ちなみに、財産がほとんどなく、免責不許可事由もない場合、破産手続開始決定と同時に、破産管財人が選任されることなく破産手続きを終了する「同時廃止」に、裁判所によって振り分けられます。
管財事件による影響
「管財事件」になってしまうと、2つのデメリットがあります。
- 費用が高くなる
- 自己破産の手続き終了まで時間がかかる
同時廃止では破産管財人をつける必要がないため、裁判所には手数料のみを支払えば済みます。一方、管財事件の場合は破産管財人への報酬も含め、裁判所に支払う金額が大幅に増えます。
また、同時廃止であれば手続きにかかる期間は約3ヶ月から4ヶ月程度と言われていますが、管財事件であれば、半年から1年程度かかると言われています。
自己破産を行うと、申し立て人は「破産者」となり、破産手続中、破産者には資格制限があります。
そのため、該当する資格や職種に就いている場合には、その資格や職種の仕事ができなくなる可能性があります。自己破産の手続きが長引くと、資格制限も長引くことになります。
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自己破産後に養育費を減額する方法
ここでは、自己破産後の養育費の減額方法について解説します。
当事者同士の直接の話し合いよりも、裁判所を通して調停や審判をしてもらうほうが、トラブルが少なくおすすめです。
方法1:話し合いによって減額してもらう
そもそも、話し合いでは、養育費の減額に応じてもらえない可能性が高く、話し合いによっては、養育費が妥当な金額にならないケースもあります。
方法2:「養育費減額調停」を申し立てる
方法2は、裁判所に「養育費減額調停」を申し立てる、というものです。
養育費減額調停を申し立てると、裁判所によって、相手方を養育費の話し合いの場を持つことができます。裁判所が間に入ることで、穏やかな話し合いができるようになります。さらに、決まったことはしっかりと書面に残るので、明確になります。
方法3:「審判」によって養育費を下げられる
養育費減額調停での話し合いによって金額が決定されない場合、手続きは「審判」へ移行します。審判では、裁判官が適正な金額を決定してくれます。
自己破産した後など、経済的に苦しい状況であれば、引き下げてもらえる可能性が高いといえます。
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まとめ
今回は、自己破産しても養育費はチャラにはならないということについてまず解説しました。
そして、自己破産と養育費の関係や、自己破産後に養育費を免除されるケース、養育費を滞納している場合の自己破産手続きの注意点、そして自己破産後に養育費を減額する方法について説明してきました。
自己破産によって養育費が免責されることはありません。
それだけでなく、自己破産を申請すると決めてから滞納していた養育費を払うことによって、偏頗弁済と見なされて、自己破産の手続きの費用が高くなったり期間が長くなるなどの不利益を被る可能性もあります。
さらに、自己破産後に養育費を減額したい場合には、自己破産とはまた別に裁判所と関わる必要が出てきます。
養育費と借金問題を抱えている人は、無用なトラブルやコストを避けるためにも、法律の専門家である司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
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