現代日本は、急速な勢いで高齢化が進んでおり、大きな社会問題となっています。また、高齢化が進むなか、認知症を患う高齢者も増えており、それに比例するかのように、認知症を患った高齢者が多額の借金を抱えてしまうケースが増えています。
この背景にはどのようなことがあるのでしょうか。またこのような高齢者の借金問題はどのように解決したら良いのでしょうか。
今回は、認知症の高齢者が借金を背負ってしまう背景や、これを解決するためにまずとるべき手続きである成年後見制度、そして借金問題を解決する債務整理の種類について詳しく解説していきます。
【基本】認知症になったらどうなるのか
まず、基本的な話として、認知症になったらどのような状態になるのでしょうか。
このように、認知症になると自分では何もできなくなります。そうなると、今まで当たり前に出来ていたことが出来なくなるため、様々な問題が発生してしまいます。
例えば買い物一つとっても、自分が何を買いたいのかがわからなくなり、店員さんに説明できないということになりかねません。また、お金の管理もできなくなるため、家族に頼んで代わりに管理してもらう必要が出てきます。
これ以外にも、トイレなどはじめとする日常の基本的なことにも支障をきたしはじめます。
\LINEで気軽に相談可能!/
認知症の高齢者が借金を抱える背景
認知症の高齢者が借金を抱える背景としては、主に以下の3つがあります。
- 少ない年金額
- 認知症による判断能力の低下
- 悪質な業者のつけこみ
以下では、順に解説していきます。
少ない年金額
借金は、収入と支出のバランスが崩れた時に発生します。高齢者の多くは仕事をリタイアしており、その収入のほとんどは年金です。
老後に向けての貯蓄があるケースならば問題は軽減されますが、そのような余裕のある貯蓄を成している高齢者ばかりではありません。
認知症による判断能力の低下
上述したように、認知症が進行すると、日常生活に支障が出るレベルで判断能力が低下します。お金の管理ができなくなるのはその一端です。
例えば、買い物では、自分で買ったものか、他人に頼まれて買ってきたものかを区別できなくなったり、財布を落としても気がつかなかったりします。同じものを繰り返し購入したり、買う必要のないものを購入したりするケースもあります。
クレジットカードを所有している場合にはさらに要注意です。手元に現金がなくても、必要のない高額なものを購入できてしまいます。
また、利息や返済日などの計算ができなくなっている状態にもかかわらず、お金が足りなくなった分を消費者金融から借りるなどして、返すこともできず結果的に大きな借金を背負うことになってしまうのです。
昨今、経済状況が悪化した関係で資金繰りにお困りの方が「クレジットカードの現金化」を行うことがあります。 ご自身のご判断で行うケースもあれば、他者からそうするように持ちかけられて行なってしまうというケースもあります。 その他最近増[…]
悪質な業者のつけこみ
認知症を患う高齢者のなかでも、一人暮らしの方や、夫婦で住んでいるが両者とも高齢者である場合、時として、悪質な業者に目をつけられることがあります。
例えば、悪質なリフォーム業者が、家を訪問してきて、「今なら無料で耐震補強工事をしてあげよう」などと声をかけてくることがあります。もちろん、ただより高いものはないのですが、しかし高齢者の場合は「無料」という言葉に弱い傾向があります。
そこで、言葉巧みに「実はこの家は老朽化していて危ない」「このままだと地震が来たときに倒壊してしまうかもしれない」などと言って不安を煽ってきます。そして、不安感を募らせたところで、リフォーム費用として多額の費用を請求してくるのです。
通常であれば、このリフォーム業者を怪しんだり、警察や国民生活センターに相談したりといった判断ができます。
しかし認知症を患う高齢者の場合、詐欺被害に遭っている事にすら気づかず、そのままローンを組んでしまった結果、後になって莫大な負債を抱えてしまうこともありえます。
\LINEで気軽に相談可能!/
まず必要なのは「成年後見の申立て」
成年後見制度とは
「成年後見制度」とは、認知症その他の理由で判断力が著しく不十分な状態にある方々を保護し、支援するための法律です。
認知症その他、判断能力が不十分となったことで財産管理ができない、あるいは、将来において必ず発生するであろう身上介護費等の支出に備えるために、あらかじめ財産を管理する必要があるような場合に利用されます。
成年後見の申立て先は
成年後見の申立て先は家庭裁判所です。認知症の方の借金を整理する際には、家庭裁判所に成年後見の申立てをする必要があります。
また、成年後見人には2つの種類があります。「任意後見」と「法定後見」です。
「任意後見」とは、本人が自分の意思に基づいて自由に契約を結べる制度です。
「法定後見」とは、裁判所が選任した「補助人」が、本人に代わって契約などの法律行為を行ったり財産を管理したりする制度です。認知症の方の借金問題の場合には前者の「法定後見」となります。
裁判所によって選任された後見人が、本人に代わって預金を引き出す等の財産の処分や管理、借金問題の解決を行います。
成年後見人の特徴
成年後見人にはその家族がなるケースもあれば、弁護士や司法書士といった専門家がなるケースもあります。
成年後見は、途中で辞めることができません。一度、家庭裁判所から決定されたら、認知症の症状が改善されるか、その本人が亡くなるまで後見人の職務が続くことになります。
つまり、それ以後の本人の財産管理や法律行為(様々な契約など)を代理でおこなうことになります。
「債務整理だけできればいいや」というものではないことに注意してください。
\LINEで気軽に相談可能!/
認知症の高齢者の債務整理の種類
認知症の高齢者の成年後見人になったのちに進める債務整理の種類はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは以下の3つを取り上げます。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
以下、順に説明していきます。
任意整理
この任意整理を行うメリットとしては、まず何より、借金の総額を減らすことができる点、そして毎月の返済額を減らすことができる点が挙げられます。また、整理対象となる資産を選択できるため、債務整理後の生活への影響を最小限に抑えられるのもポイントです。
加えて、裁判所を通さない手続きのため、家族に秘密のまま借金問題を解決できるという点も挙げられます。ただし、認知症高齢者の借金の場合には、家族間で隠す必要もないと考えられますので、あまり重要ではないと思われます。
一方で、デメリットとしては、まず、任意整理を行った場合、借金完済後から数えて5年間はブラックリストに登録されるため、その期間は新たな借り入れができなくなってしまう点が挙げられます。
ただし、これについても、高齢者が新たに借り入れを必要とすることも考えにくいため、大きなデメリットにはならないと思われます。
個人再生
この手続きを行うためにはいくつか条件があります。「継続的または繰り返して収入を得られること」や「借り入れが個人のものであること」「住宅ローンをのぞく借金の金額が5000万円以内であること」などがその条件です。
個人再生のメリットとしては、まず、借金の総額を大きく減らせる点が挙げられるでしょう。また、住宅などの資産を残すことも可能であり、個人再生の手続きをしたあとの認知症高齢者の住居の確保なども可能です。
一方、デメリットとしては、個人再生を行うと官報に掲載されてしまうため、周囲に借金をしていることがバレてしまいやすいという点などが挙げられます。また任意整理と同様、5〜10年間はブラックリストに登録されるという点も挙げられます。
ただし、後者に関しては、前述の任意整理と同様、認知症高齢者にとってはあまり大きなデメリットではないと思われます。
自己破産
自己破産のメリットとしては、まず、借金の全額をゼロにすることができるという点です。年金支給額が少ない高齢者にとっては、自己破産後に支給される年金を生活費に充てることができるのは、大きな安心材料といえます。
\LINEで気軽に相談可能!/
認知症の高齢者の借金問題は司法書士への相談がおすすめ
ここまでに述べてきたように、認知症の高齢者の借金問題の解決のためには、まず成年後見制度の利用が必要になります。つまり、家庭裁判所への申立てという法律的な手続きが必要になる、というわけです。
債務整理に強い司法書士、加えてできれば認知症高齢者の債務整理の経験をもつ司法書士を探して相談しましょう。
\LINEで気軽に相談可能!/
まとめ
今回は、認知症の高齢者が借金を背負ってしまう背景や、これを解決するためにまずとるべき手続きである成年後見制度、そして借金問題を解決する債務整理の種類について詳しく解説してきました。
これから先も高齢化は進んでいきます。またいわゆる「独居老人」の増加に伴い、家族の目が行き届きにくくなる中で、認知症の高齢者が借金を背負うケースはますます増えていくと思われます。
判断力の低下した高齢者から、すべての借金の内容を聞き出すことはなかなか難しく、家族の中だけでは解決できないこともあります。
当事務所では、認知症高齢者の債務整理のご相談を受け付けております。まずは下記ボタンよりお気軽にご相談ください。
借金返済にお困りなら今すぐご相談ください
当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。