借金に悩む中で、生活保護を受けながら個人再生を検討している方もいるかもしれません。しかし、制度上の制約から、同時に利用することは不可能です。生活保護費は返済に充てられる「収入」として認められないため、個人再生の条件を満たすことができません。
本記事では、生活保護と個人再生の制度的な関係を整理しながら、生活保護受給者にとって現実的な債務整理の方法を解説します。
個人再生と生活保護の関係
生活保護を受けている方が個人再生を進めようとしても、法律上の制約があるため、両立はほぼ不可能です。
制度の仕組みを理解することで、生活保護を受給している方がどのような債務整理の手段を選ぶべきか、その方向性がよりはっきりと見えてきます。
生活保護を受けながら個人再生は不可能
冒頭でも触れたとおり、生活保護を受けている場合、個人再生を利用することは制度上できません。
まず、個人再生には3年間の分割返済が必要ですが、返済原資として生活保護費は認められていません。生活保護費を借金返済に充てることは、不正受給とみなされ、支給停止や返還請求の恐れがあります。
裁判所は生活保護受給者を「継続的収入の見込みなし」と判断するため、申立て自体が却下されます。個人再生は、安定した収入がある人だけが利用できる制度です。
個人再生が認められるための要件とは
個人再生は、将来にわたって継続的な収入があることが利用条件になります。会社員や安定収入のある自営業者など、毎月収入が見込める人が対象です。
住宅ローン以外の債務が5,000万円以下であることも条件として民事再生法221条に明記されています。債務額がこの上限を超える場合、個人再生の利用は不可能です。
なお、アルバイト収入であっても、雇用が継続している実績があり、安定性が認められれば条件を満たす可能性があります。ただし、短期や不定期な雇用は収入の継続性が乏しいと判断され、要件を満たさないことがあります。
生活保護なら自己破産を検討すべき
生活保護を受けている場合、個人再生のように返済を前提とした手続きは利用できません。現実的な解決策として自己破産の選択を検討しましょう。
自己破産では、借金がすべて免除され、生活保護との制度上の矛盾もありません。生活保護費はそのまま受給でき、生活に必要な家具や衣類などの財産も原則として処分対象になりません。
また、免責が認められれば、将来的に収入を得たときも過去の借金に悩まされることがなくなるでしょう。借金をゼロにし、生活再建に集中できるという点で、生活保護受給者にとって自己破産は最も現実的で負担の少ない選択肢といえるでしょう。
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制度の制約と注意点
生活保護と債務整理は、それぞれ異なる目的を持つ制度であり、同時に利用するには様々な制約があります。両制度の仕組みや趣旨をしっかり理解しておくことが、適切な対応をとるうえで欠かせません。
生活保護と債務整理の制度上の関係
生活保護法によると、「借金返済は生活需要外」と解釈されており、保護費を返済に充てることは違法行為とされています。そもそも生活保護費は、最低限度の生活を送るために支給されるものであり、借金の返済に使うことは制度の本来の趣旨に反します。
任意整理や個人再生は、手続き後も返済義務が残るため、生活保護受給中は利用することができません。返済義務のある制度と、支出に制限がある生活保護は、根本的に両立しない仕組みになっているのです。
ただし、借金整理を終えてから生活保護を申請することは可能です。整理前に弁護士と福祉事務所の連携が必要となります。順序を誤ると、支援を受けられなくなる場合もあるため注意が必要です。
個人再生は返済が前提の手続き
個人再生は、原則として3年間にわたる分割返済が前提となります。毎月2〜3万円ほどの返済が可能な安定した収入が必要不可欠です。
返済不能が判明した場合には、再生計画不認可となり、手続きが打ち切られることになるでしょう。裁判所は返済計画の実行可能性を厳しく審査し、現実的でないと判断されれば、申立ても却下されます。
また、返済中に収入が途絶えると、手続きが失敗に終わり、減額された借金が元に戻る可能性もあります。継続的で安定した収入の確保が、個人再生を成功させる前提条件といえるでしょう。
基本的に申立てが認可されることはない
個人再生を申立てるには、安定した収入があることが絶対条件です。しかし、生活保護費は収入として認められないため、生活保護を受けている状態では条件を満たせません。
裁判所は申立て時に収入の有無を厳しく確認し、継続的な収入がないと判断すれば申立ては却下されます。また、収入があるように偽って申告すれば、詐欺罪に問われるリスクもでてくるでしょう。
親族からの仕送りなども、収入と認められるには書面で継続性を証明する必要があります。生活保護を受けながら個人再生を利用するのは事実上不可能といえるでしょう。
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手続きのポイント
生活保護受給者が債務問題を解決するための手続きには明確なポイントがあります。現実的な選択肢を理解し、適切な専門家の支援を受けることが望ましいでしょう。
収入がないなら個人再生ではなく自己破産
無職や無収入の状態では、返済が前提となる個人再生は利用できません。借金をゼロにできる自己破産が現実的な選択肢といえるでしょう。
自己破産では、ギャンブルや浪費などの免責不許可事由がなければ、すべての借金が免除されます。また、手続き中であっても生活保護の受給は継続でき、生活に必要な家具や衣類などは没収の対象外です。
借金が完全に免除されれば、経済的な重荷が取り除かれ、将来に向けて生活を立て直すことができるでしょう。借金に悩まされることなく、安心して生活を再設計できるのが自己破産の大きなメリットです。
将来的に安定した収入を得られるなら個人再生も可能
現在は無職であっても、近いうちに就職が決まっているなど、確実に収入を得られる見込みがあれば、個人再生を利用できる場合があります。内定通知書や雇用契約書など、収入の発生が証明できる書類が必要です。
ただし、何度もお伝えしているとおり、生活保護を受けながらの利用はできません。収入が発生すれば生活保護は停止されるため、実質的に生活保護からの脱却が前提となります。
したがって、就職の見込みがある方は、まず雇用を開始して収入が安定してから個人再生を検討することをおすすめします。制度を正しく使うためにも、タイミングを見極めた対応が大切でしょう。
司法書士に相談して自分に適した解決を
個人再生と生活保護についてお悩みの方は、司法書士や弁護士に相談すると、今後の行動指針を見つけることができるでしょう。
また、自己破産の手続きも、司法書士であれば書類作成などをサポートしてもらえるため、専門知識がなくても安心して進められます。個々の状況に応じて、どの方法が最適なのかを判断するためにも、まず専門家に相談することをおすすめします。
個人再生は、多重債務者が借金の減額や返済計画の見直しを行うための法的手続きですが、その際に専門家のサポートが必要です。弁護士と司法書士は個人再生の手続きをサポートする役割を担っていますが、依頼する際にどちらを選ぶべきか迷うこともあるでしょう[…]
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まとめ
生活保護を受けながら個人再生を利用することは制度上できません。生活保護費は返済に使えず、安定収入も要件を満たさないためです。
無収入の場合は、借金を免除できる自己破産が現実的な解決策となります。就職の見込みがある場合は、生活保護から脱却したうえで個人再生を検討すると良いでしょう。
当事務所でも個人再生や生活保護についてお悩みの方の相談を受け付けています。無料相談も実施していますので、まずはお気軽にご相談ください。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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