借金が膨らみ、返済の見通しが立たなくなったとき、生活を立て直す手段の一つとして注目されるのが「個人再生」です。借金を大幅に減額しつつ、自宅や車などの資産を手元に残すことができる制度として、多くの人が利用を検討しています。
しかし、個人再生には厳格なルールが定められており、少しのミスや見落としが致命的な結果を招くこともあります。例えば、親族への返済や財産の申告漏れなどです。善意で行った行動が法律上のルールに反していたために、手続きが認められなかったというケースも少なくありません。
本記事では、個人再生の手続き中や手続き後に「やってはいけないこと」を詳しく解説します。万が一失敗した場合の対処法についても解説するので、参考にしてみてください。
個人再生手続きでやってはいけないこと
借金問題を解決するために個人再生の手続きを選択したのであれば、手続き中に避けるべき行動をしっかりと把握しておく必要があります。
申立て前から手続き中、そして手続き後にいたるまで、ルールを守ることで再生計画が認められる可能性が高まるでしょう。
特定の債権者にだけ優先して返済すること
特定の相手にだけ先に返済をすることを「偏頗(へんぱ)弁済」と呼びます。
偏頗弁済の対象は、銀行や消費者金融だけでなく、親族や知人も債権者に含まれます。例えば、親に借りたお金だけ先に返したり、友人からの借金だけを完済したりする行為です。偏頗弁済を行うと個人再生手続きに悪影響が出ます。
個人再生の中で偏頗弁済が明らかになると、支払った金額がそのまま保有財産に上乗せされる形となります。個人再生には「清算価値保証の原則」といって、保有財産以上の返済をしなければならないとされているため、偏頗弁済の金額によっては、最低弁済額が引き上げられてしまう可能性が出てくるため注意が必要です。
虚偽の申告や財産隠しをすること
個人再生では、債権者の情報や債務の金額、財産の内容を正確に申告する必要があります。万が一、これらを偽って申告したり、意図的に財産を隠したりすると、手続きそのものが認められない可能性があるでしょう。
「言わなければバレないだろう」と軽く考えていても、調査によって不正が発覚すれば、手続きが廃止されることもあります。個人再生では「誠実さ」が裁判官の心証を左右することもあるため、正直な対応が欠かせません。
不動産や車、保険、株、預金など、どんな財産であっても、きちんと裁判所に申告する必要があります。「知らなかった」「忘れていた」という理由では通用せず、後から問題になる可能性もあるため注意が必要です。
再生計画案の提出期限を守らないこと
個人再生の手続きでは、裁判所が指定する期限までに「再生計画案」を提出しなければなりません。この期限を守れなかった場合、手続き自体が打ち切られてしまう可能性があります。
提出期限は厳格に扱われており、たとえやむを得ない事情があったとしても、期限を過ぎれば再生手続の「廃止」が決定されることもあるのです。
計画的に準備を進めるためには、依頼した専門家との連携を密に取ることが求められるでしょう。特に、収入証明や各種必要書類など、申立人自身が準備すべきものは早めに取り掛かるようにしましょう。
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個人再生の手続き後にやってはいけないこと
無事に個人再生の手続きが完了し、再生計画が認可されたとしても、安心するのはまだ早いです。手続き後の返済期間中にも、守るべきルールが存在します。ここでは手続き後にやってはいけないことを解説します。
再生計画に従った返済を怠ること
再生計画どおりに返済できなくなってしまうと、債権者から「再生計画の取消し」を求める申立てが行われる可能性があるでしょう。
月々の返済額は、裁判所が「無理のない範囲で返済可能」と判断した金額であるため、本来は問題なく支払えるはずです。それにもかかわらず返済が滞ると、再生計画そのものが取り消され、手続きが無効と見なされるおそれがあります。
減額された借金は元の金額に戻り、手続き前の状態に逆戻りしてしまうでしょう。万一の事態に備え、突発的な支出や収入減に対応できるよう、日頃からある程度の貯蓄を用意しておくことが大切といえるでしょう。
新たな借入や浪費行為をすること
個人再生の手続きが進行中に新たな借金をすることは、債権者からの信頼を損ねる行為と見なされかねません。計画的な返済が求められる中での追加の借入は、「また同じことを繰り返すのではないか」と疑念を持たれる原因になります。
さらに、ギャンブルや株などの投機的な行動、パチンコや高額な娯楽への出費なども、生活の再建を目的とする再生計画の趣旨に反します。生活に必要な支出以外は、なるべく返済に充てるという意識を持つことが大切です。
特に、収入に見合わない浪費を続けると、手続きそのものが廃止される恐れがあります。外食やちょっとしたレジャー程度であれば問題ありませんが、過度な出費は避け、債権者から疑念を抱かれない生活を心がける必要があるでしょう。
返済困難になった場合の対応を怠ること
予期せぬ失業や病気などで返済が難しくなった場合、裁判所に再生計画の内容変更を申し立てることが可能です。最大で2年間の延長が可能ですが、変更が認められるかどうかは、返済が困難になった理由や、今までの返済実績によって判断されます。
一定の返済が完了している状態で、やむを得ない事情が発生した場合には「ハードシップ免責」が適用されることもあります。制度が認められると、残りの債務がすべて免除されることになるでしょう。
困ったときは一人で抱え込まず、まずは手続きを依頼した専門家に相談しましょう。
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個人再生の手続きが失敗した場合の対処法
万が一、個人再生の手続きが失敗してしまった場合でも、他の選択肢が残されている場合があるでしょう。ここでは個人再生が思うように進まなかった場合の対処法について、具体的に解説します。
即時抗告とハードシップ免責による対応
再生計画が裁判所に認められなかった場合、「即時抗告」という不服申し立てを行うことができます。即時抗告は、決定から2週間以内に手続きを行う必要がありますが、実際に認められるケースはほとんどありません。
一方で、再生計画が認可されたあとに、やむを得ない事情で返済が続けられなくなった場合には「ハードシップ免責」が利用できる可能性があります。ハードシップ免責が認められると、残った債務をすべて免除してもらうことができるでしょう。
ただし、再生計画の返済額の4分の3以上をすでに支払っていることなど、厳しい条件が設けられています。「払いたくない」「払えない」といった理由では認められませんので、あくまで正当な事情と実績が必要でしょう。
借金の返済に行き詰まり、個人再生の手続きを選んだ方にとって、再生計画は生活再建の大きな柱となります。 しかし、計画通りに返済を進めていても、突然の病気や失業といった予期せぬ出来事により、返済の継続が難しくなることもあるでしょう。そんな[…]
自己破産への切り替えを検討する
個人再生が難しいと判断された場合には、最終手段として自己破産の選択肢があります。自己破産が認められると、原則としてすべての借金の返済義務が免除されますが、自宅や車、保険といった財産は処分の対象となります。
特に、借金の額が大きすぎてそもそも再生計画が成立しない場合や、収入の見通しが立たず履行可能性が低いと考えられる場合には、自己破産への移行が現実的な解決策となることもあるでしょう。
自己破産には一定の制限や不利益もありますが、借金問題を解決し、新たな人生の再スタートを切る方法として、有効な手段であることに変わりはありません。
給与所得者等再生への切り替えを検討する
個人再生には大きく分けて2つの手続きがあります。ひとつは「小規模個人再生」、もうひとつが「給与所得者等再生」です。小規模個人再生では、債権者の過半数が同意しないと再生計画が認められません。債権者の反対によって手続きが失敗に終わってしまうこともあります。
債権者の不同意によって手続きが進まない場合は、給与所得者等再生へ切り替えるという方法があります。債権者の同意が必要なく、裁判所が条件を満たしていると判断すれば再生計画が認可されるでしょう。
ただし、給与所得者等再生では収入の安定性や返済能力がより厳しく審査されるため、結果として月々の返済額が高くなる傾向があります。債権者の同意が得られず小規模個人再生が進められなかった場合にのみ、有効な選択肢となるでしょう。
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まとめ
個人再生は、借金を大幅に減額できる債務整理の一つですが、ルールや注意点が多く、正しく進めなければ失敗に終わってしまうこともあります。
特に気をつけたいのは、特定の相手への優先返済や財産の申告漏れ、再生計画案の提出遅れといった行為です。また、手続きが終わったあとも、計画通りの返済を続けること、新たな借入や浪費を控えることが求められます。こうしたルールを守らなければ、せっかく認められた再生計画が取り消される恐れもあるでしょう。
もし手続きが失敗してしまった場合でも、ハードシップ免責、自己破産、給与所得者等再生といった選択肢が残されています。大切なのは、早めに専門家へ相談し、自分にとって最適な選択肢を見つけることです。個人再生についてお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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