自己破産は、借金の返済が難しい状況で経済的な再出発を図るための手続きですが、一方で日常生活における様々な制限も伴います。自己破産後にはどのような活動や取引が制限されるのか、事前に知っておくことはとても重要です。
本記事では、自己破産によってできなくなることや制限の内容を詳しく解説します。手続き前に必要な情報をしっかり把握し、適切な判断をするためにお役立てください。
自己破産するとできないこと
自己破産は重大な決断です。借金の重圧から解放される反面、行動の自由が制限されます。手続き中と後で分けて、具体的に見ていきましょう。
自己破産手続き中にできないこと
破産手続き開始から免責決定までの期間、裁判所の管理下に置かれます。そのため、通常通りの生活が難しくなる場合もあるでしょう。
引っ越しや旅行には裁判所の許可が必要になるため、住所変更の自由が制限されます。転勤や緊急帰省の際も制約を受けかねません。急な転勤の話が舞い込んでも、すぐに動けないもどかしさを感じることでしょう。
破産管財人が選任されると、郵便物を直接受け取れなくなります。郵便物は、管財人が内容確認後に破産者へ渡されるため、大切な手紙や請求書の到着が遅れる可能性も考えられるでしょう。支払いスケジュールの管理には注意が必要です。
金銭面での制限も厳しく、預金口座が凍結され、自由な出金ができなくなります。日常生活に必要な最低限の現金は許可されますが、それ以外は管財人の管理下に置かれます。突発的な出費に対応できず、生活に支障をきたすこともあるでしょう。
生命保険に関しても影響が及びます。解約返戻金が20万円以上の場合、解約される可能性があります。長年積み立ててきた保険が一朝一夕で無くなってしまうかもしれません。
ただし、小規模個人再生などの他の債務整理手続きを選択すれば、解約を避けられる場合もあります。大切な保障を失わないためにも、専門家に相談することをおすすめします。
自己破産手続き後にできないこと
破産手続きが終了しても、制限がゼロになるわけではありません。社会生活を送る上で重要な影響を及ぼすものもあります。
破産手続き中は職業選択の自由に制限がかかるため、弁護士や税理士、公認会計士といった資格職に就くことができなくなります。会社の取締役になることも叶いません。長年の夢だった士業への転職を諦めざるを得ない状況に直面するかもしれません。
これらの職業に就いている場合や、将来の夢として抱いている場合は、自己破産を選択する前に慎重な検討が必要です。(なお復権後、これらの制限は消滅します)
金融機関との関係も大きく変化します。自己破産の記録は、信用情報機関に最長10年間記録されるため、ローンの審査に通りにくくなります。住宅ローンやマイカーローンといった大型ローンはもちろん、クレジットカードの作成も困難になるでしょう。日々の買い物でさえキャッシュレス決済ができず、不便を感じるかもしれません。
破産者は収入の範囲内で生活することが求められるため、新たな借り入れもできません。再び多重債務に陥ることを防ぐための措置ですが、急な出費や災害時の対応に不安を感じることもあるでしょう。ただし、病気の治療費や災害復旧のための資金など、真にやむを得ない場合は例外的に認められることがあります。
連帯保証人になることも禁止されます。他人の債務を保証する能力がないと判断されるためです。親しい友人や家族から頼まれても断りましょう。
自己破産するとできないと勘違いされていること
自己破産に関しては誤解されていることも多く、正しい理解が必要です。
「会社をクビになる」という誤解がありますが、自己破産を理由とした解雇は違法とされています。ただし、就業規則で定められている場合は別です。事前に確認しておくことをおすすめします。自己破産を理由に不当な扱いを受けた場合は、労働組合や労働基準監督署に相談するという方法もあります。
就職活動への影響を心配する声も多いです。確かに、金融機関や士業など一部の業界では不利になる可能性はあるでしょう。しかし、多くの企業では、自己破産の事実そのものより、その後の生活態度を重視します。前向きに取り組む姿勢が評価されることも多いです。むしろ、借金問題を乗り越えた経験を強みとして生かせる場合もあるでしょう。
生活保護の受給に関する誤解もあります。自己破産したからといって生活保護を受給できなくなることはありません。むしろ、借金の返済に追われることなく、生活再建に専念できるようになります。ただし、生活保護の受給には別途審査があり、資産や収入などの条件を満たす必要があります。自己破産と生活保護は別個の制度であり、それぞれの要件を確認することが大切です。
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自己破産をしないほうがいいケース
自己破産は有効な債務整理の手段ですが、全ての人に適しているわけではありません。以下のようなケースでは、他の方法を検討すべきでしょう。
家や車などの失いたくない資産がある場合
自己破産すると、一定額以上の資産は処分の対象となります。破産管財人によって換価され、債権者への配当に充てられるのです。
持ち家や高級車、貴金属などは、処分対象となる可能性が高いため、手放したくない資産がある場合は要注意です。長年住み慣れた我が家を失うことになれば、生活の基盤が崩れてしまいます。高級車が趣味の一部であれば、生きがいを奪われる思いがするかもしれません。
生活に必要不可欠な最低限の資産は手元に残せますが、それ以外は原則として処分されます。「必要不可欠」の判断基準は厳しく、贅沢品とみなされれば処分対象になります。例えば、通勤に必要な普通自動車は残せても、高級外車は処分対象になる可能性が高いです。
失いたくない資産がある場合は、個人再生などの他の債務整理方法を検討すべきです。個人再生であれば、一定の条件下で資産を保持したまま債務の一部を免除してもらえる可能性があります。大切な資産を守りつつ、債務問題の解決を図ることができるかもしれません。
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資格制限に該当している場合
自己破産すると、一部の資格や職業に就けなくなる可能性があります。職業選択の自由を制限するものであり、慎重に検討しなければなりません。
具体的には、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公認会計士などの法律・財務関連の資格が該当します。資格を持っている場合でも。自己破産によって資格を失う可能性があります。長年かけて取得した資格が一瞬にして無になってしまうのです。
また、会社の取締役や監査役にも就任できなくなります。経営者や役員の方は特に注意が必要です。会社の経営に携わることができなくなれば、キャリアの大きな転換を余儀なくされるでしょう。
他の債務整理でも対応可能な場合
債務の総額や返済能力によっては、自己破産以外の方法で対応できる可能性があります。より制限の少ない方法で解決できるのであれば、そちらを選択するのが賢明です。
個人再生も選択肢の一つです。将来の収入から返済する方法で、一定の債務が免除されます。自己破産と比べて資産を保持できる可能性が高く、信用情報への影響も小さいです。住宅ローンがある場合、自宅を手放さずに債務整理できる可能性があります。
また、債務の一本化を図るための債務借換えも検討に値します。複数の借金を一つにまとめることで、金利負担を軽減し、返済計画を立てやすくなるからです。借金の全体像が把握しやすくなり、返済へのモチベーションも上がるかもしれません。
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まとめ
自己破産によって生じる制限や影響について詳しく見てきました。確かにさまざまな制約はありますが、新たな人生のスタートを切れるのも事実です。借金の重圧から解放され、心機一転して生活を再建できる可能性があります。
当事務所では自己破産に関する相談も随時受け付けています。借金問題で悩んでいる方、自己破産以外の選択肢を知りたい方、お一人で抱え込まず、ぜひご相談ください。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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