個人再生は借金問題の解決策として選ばれることが多いですが、必ずしも全ての手続きが成功するわけではありません。実際に個人再生の手続きを開始しても、申立てが認められなかったり、途中で手続きが打ち切られたりするケースも存在します。
そこで今回は、何が原因で個人再生が失敗するのか、どうすれば失敗を回避できるのかについて詳しく解説していきます。
個人再生が失敗する確率
個人再生は債務整理の1つとして多くの方に選ばれていますが、全ての手続きが成功するわけではありません。
とはいえ、統計を見ると、正しく手続きを進めればほとんどの場合で成功していることが分かります。まずは、個人再生の成功率について詳しく解説します。
個人再生の失敗率は約6〜8%程度
裁判所が公表している過去の司法統計を見てみると、個人再生の失敗率は申立て全体の約6%となっていて、ほとんど失敗する可能性が低い数値といえるでしょう。
最新の令和5年の司法統計においても、個人再生の失敗率は申立全体の約8%程度であり、正しく手続きを進めればほぼ成功することが分かります。
日弁連の2020年における個人再生に関する調査を見てみても、個人再生事件のうち認可決定で終結した割合は91.70%で、成功率は90%を超えています。統計から見ても、個人再生は比較的高い成功率を誇る債務整理と言えるでしょう。
小規模個人再生と給与所得者等再生の成功率の違い
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、統計上、どちらも90%以上の高い成功率となっています。
ただし、小規模個人再生では債権者による書面決議が行われるため、債権者の同意が得られないと手続きが廃止される可能性があります。そのため、債権者からの強い反対がある場合は注意が必要です。
給与所得者等再生は債権者に対して同意不同意を求める機会がないため、裁判所の判断だけで認可決定を得ることができます。安定した収入がある給与所得者であれば、こちらの方が成功率が高くなる傾向にあるでしょう。
個人再生の失敗と成功の判断基準
個人再生では、裁判所から再生計画案の認可決定を受けることを成功と判断する指標としています。統計上の個人再生の成功とは、申立てが認められ、再生計画が認可された時点までということ。
しかし、実際は完済するまで個人再生が終わったとは言えません。手続きが最後まで完了し、借金の減額が実現することが真の成功と言えるでしょう。
よって、認可決定を受けたとしても、その後計画どおりに返済できなければ、結局は個人再生に失敗したことになります。単に認可決定を得るだけでなく、再生計画に基づく返済を完了させることが重要なのです。
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個人再生が失敗するケース
個人再生手続きが失敗するケースはいくつか存在します。申立ての段階で認められないケース、手続きの途中で打ち切られるケース、そして再生計画が認められないケースに分けて考えることができます。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
申立てが認められないケース
個人再生の利用条件を満たしていない、手続き費用を納めていない、不当な目的で申立てた場合などに棄却されます。
申立てが棄却される代表的な理由は「期限までに費用や書類が用意できない」「明らかに再生計画の成立が見込めない」「申立ての目的が不当・不誠実である」などがあります。
裁判所は申立ての内容を厳格に審査するため、要件を満たしていない場合は認められません。個人再生の基本条件として「①継続または反復して収入を得る見込みがあること」「②債務の総額が5000万円以下であること」を満たす必要があります。条件に当てはまらない場合は、申立てが認められないケースがほとんどです。
手続きが途中で打ち切られるケース
再生手続開始決定後に個人再生の利用条件を満たさないことが明らかとなった場合や裁判所の命令に違反した場合に廃止されます。
再生計画案を提出期限までに提出しなかった場合、裁判所は再生手続の「廃止」という決定を出します。期限は厳格に管理されているため、提出が遅れないよう注意が必要です。
その他にも、小規模個人再生の場合は、再生計画案が債権者の過半数(もしくは債権額の過半数)から不同意が出てしまうことで、手続きが廃止されるリスクがあります。
- 個人再生の利用条件を満たさしていない
- 裁判所の命令に違反した
- 再生計画案を提出期限までに提出しなかった
- 小規模個人再生で、再生計画案が債権者の過半数(もしくは債権額の過半数)から不同意が出た
再生計画が認められないケース
再生計画が遂行される見込みがない、計画弁済総額が最低弁済額基準に違反しているなどの場合に不認可となります。
再生計画が不正の方法により成立した場合や再生債務者が再生計画の履行を怠った場合に認可が取り消されるのです。虚偽の申告や意図的な情報隠しは厳しく罰せられる点に注意が必要です。
個人再生申し立て後に行われる、履行テスト(実際に支払いができるか数ヶ月積立をしてテストすること)に失敗した場合も、不認可となってしまうおそれがあります。返済能力を裁判所に証明できないと認可決定が出ることはありません。
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個人再生が失敗しないためのポイント
個人再生を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは失敗を防ぐための具体的な対策について解説します。正しい知識と手続きの理解、期限の厳守、専門家への相談が失敗しないためには重要です。
個人再生の条件と手続きルールを正確に理解する
個人再生に失敗するケースのほとんどは、法律や手続きを正しく理解していなかったことが原因といえます。個人再生の要件を満たしていない場合は、手続きを前に進めることができないため、事前に正確な知識を身につけることが重要です。
どういった条件が必要なのか、どのような手続きの流れになるのかを、あらかじめ把握しておきましょう。個人再生の利用条件や手続き上のルールを正しく把握し、無理のない再生計画を立てることが失敗を防ぐ鍵です。
書類提出と期限を厳守する
個人再生では、裁判所が指定した期限までに書類を提出する必要があり、特に再生計画案は提出期限を厳守することが求められます。
提出書類に不備・不足がないか、再生計画案は法律の要件を満たしているか、再生計画の実現可能性はあるかなど、正確に確認しなければなりません。書類作成は複雑で専門的なため、司法書士といった専門家のサポートを受けることが賢明です。
期限までに余裕をもって書類を提出できるよう準備し、虚偽申告は絶対に避けましょう。裁判所からの信頼を失うと、手続き全体が不利に働くことになりかねません。
司法書士に依頼する
個人再生は他の債務整理の方法と比べて複雑であり、経験豊富な司法書士に相談・依頼することで手続きを円滑に進め、成功率を高めることができます。
裁判所も司法書士など専門家への依頼を前提として個人再生の制度を運用している部分があり、個人が自力で行うと失敗する可能性が非常に高いです。書類作成や法的な判断は素人には難しい面が多いのが現実です。
債務整理にかかる費用を節約したいがため専門家に依頼しないと、失敗するリスクが上がってしまいます。長期的に見れば、専門家に依頼する費用は必要投資と捉えるべきでしょう。
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個人再生が失敗した場合の対処法
万が一、個人再生が失敗してしまった場合でも、すぐに諦める必要はありません。ここでは失敗した後の対処法について解説します。
個人再生が失敗するとどうなるか
個人再生に失敗すると借金が減額にならず、手続きにかかった費用などが返ってくることもありません。せっかく減額される見込みのあった借金も、すべて元に戻ってしまうため、経済的な負担は大きくなります。
個人再生の失敗後も借金問題は解決せず、債権者から訴訟や差押といった手段を取られる可能性があります。そのため、失敗後も迅速に別の対策を講じる必要があるでしょう。
個人再生手続を再度申立てる
過去に個人再生を申立てたことがあっても、再び個人再生を申し立てることは可能です。
失敗した原因を理解し、その解決策を用意したうえで再申立てすることが重要です。前回と同じ理由で失敗しないよう、状況改善の証拠を示せるようにしておきましょう。
自己破産など他の債務整理を検討する
個人再生が無理な場合は、自己破産を検討するのが一般的です。自己破産をすれば借金の返済義務はすべてなくなりますが、一定以上の財産は処分しなければなりません。
具体的には、住宅や自動車などの高額な財産が裁判所によって処分されてしまいます。自己破産を選択する際は、こうした手続き上のデメリットを正確に把握した上で、慎重に検討しながら利用することを心がけてください。
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まとめ
個人再生は約90%以上の高い成功率がある債務整理方法ですが、条件や手続きを正しく理解し、専門家のサポートを受けることで失敗のリスクをさらに下げることができます。
万が一失敗した場合でも、再申立てや他の債務整理方法の検討など、次の一手は残されています。諦めずに適切な対処法を選ぶことが重要です。
当事務所では個人再生に関する相談も随時受け付けています。債務問題で悩んでいる方は、一人で抱え込まないことが大切です。まずはお気軽にご相談ください。
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当事務所は任意整理・個人再生・自己破産に対応しています(司法書士業務の範囲内に限る)。どの手続きが良いか分からない場合、ご依頼者様の状況を見てご提案しますのでご安心ください。
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